ドイツ デュッセルドルフのクッキングスクールから 

在独40年+α デュッセルドルフの大手料理教室で講師をしております

西洋料理の味付けのお話

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abschmecken・・・

gut gewürtzt・・・・

 

『調味』のことをドイツ語では上記のように表現します。

 

上の写真の一皿は、

お魚をパリッと焼いて、生クリームにドライベルモット、

そして燻製の香りをまとったパプリカ粉でお化粧したホワイトソースです。

 

もちろん、お塩で味付けはしておりますが、

日本語での『味付け』とは、語彙の内容が多少異なるような気がします。

 

なぜ、

暮れの12月30日にこんなことをつぶやくようになったかというと・・

 

先ほど

お節に入れる手綱こんにゃくを煮切っているとき、

あ!

と、気づいたことがありまして。

 

 

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「味付けはなんですか?」

 

というご質問を、日本人の方よりいただくことが度々ございます。

 

その都度、考えるのが

『西洋料理と和食の違い』です。

 

イタリアンでもフレンチでも、

そして

日本では、人気のないドイツ料理も・・・

 

『香り』が主流となります。

 

最後にまとわせるリキュール類やバターの香り、

季節の香り、

香辛料やハーブの香り・・・

 

味付けという文字を分解すれば、

 

『味』

『付ける』

 

となりますよね?

 

これは『舌が感ずる文化』でしょうか。

 

それに比較すれば、西洋では『香りの文化』だと思います。

 

 

西洋料理では、

土の香り、獣の香り、太陽の香り、海の香りetcがあり、

その素材に『ソース』という衣を着せていただく・・

 

ということをご説明しているのがドイツでのクッキングスクールでの日常ですが、

 

自宅でのお節の準備中、

大雑把な意味での『西洋』と、和食文化の違いが私なりに

理解できたような気がします。

 

手綱こんにゃくの場合、

まず塩をしてすりこぎで叩いてから水煮して、

そのあと味付け。

 

お醤油味醂お出汁の中で煮込んでいきます。

 

 

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和食の基本のさしすせそは、

素材にまとわせる味ではあるけれど、

香りではない・・

 

毎朝のお味噌汁とか、鯵のひらきとか、

鰹節を削る音や『トントントン』というまな板でお漬物を切る音と同様、

幼い頃より染み付いた日本の食の音、そしてニッポンの朝の味です。

 

ですが、

 

?????

 

下の写真の小さなグラスの中には、

ブルターニュの沖で取れた石ヒラメと、その地方の白ワインとハーブの香りが詰まっています。

口をつけなくてもその香りで、

南仏の風が舞うように工夫をした一品です。

 

お客様にサービスすると、

「あー、南フランスの香りがする」

「これは去年のバカンスの香りだわ」

と、まず鼻をつけておっしゃいます。

 

 

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ここで比較論として、

例えば日本のお寿司。

 

適温に調整されたシャリと、

お魚のマリアージュ・・・

 

お寿司は、

口に入れた瞬間から広がっていく旨味の、刻々とした変化を楽しむものだと思います。

 

 でも、

お寿司屋さんで目の前で握られるお寿司を、

香りを嗅いでからいただく方はまずいらっしゃらないのではないでしょうか?

 

穴子以外・・・

 

和食には『出汁』という強力な武器があり、

出汁の香りに塗りの器、陶器の温かみという日本古来の美しさが、

和食の素晴らしさだと思います。

 

 基本となる調味料のさしすせそ、

要するに調味料を『加えて』

素材に『味付け』して本来の味を『引き出す』というその一手間が、

和食だと感じた一瞬でした。

 

なんだかとりとめなくなりましたので・・・

 

この辺で2020年は退散いたします。

 

2021年は普通の年となりますように。